【乳がんと私】乳がんで失ったものは何もないことに気づいた（cocoさん　40歳）

　もともと人付き合いが苦手だったcocoさんですが、乳がんになって自分の新しい一面を発見します。これからは治療は辛いだけではない、という面も伝えていきたいと話してくれました。

ーー乳がんになってから変わったことってありますか？

放射線治療の中盤ぐらいから地元の患者会に行くようになったんです。そこで中国人の友達ができました。乳がんにならなければ、中国人の友達なんてできないでしょ？

旦那さんが日本人で日本語はペラペラなんですけど、やはり旦那さん以外に頼る人がいないみたいで。しかもステージが高くてかなり落ち込んでいたんです。彼女が「死んじゃうかもしれない」と言った時、自分のことのように私がすごく落ち込んでしまいました。

彼女には頻繁にメールを出すようにして、今は彼女も落ち着いてきたんですけど、彼女を励ますのが私の役割、私の目標みたいに思っていて。私が元気じゃなくちゃ彼女を励ませない、私が前向きにならなくちゃ、って。

ーー昔からそんな感じだったんですか？

いえいえ、もっとドライ（笑） 人付き合いは苦手なほうで、会社の友達もろくにいないんです。

スポーツジムには通っているけど、そこで友達をつくろうともしないし、積極的に話しかけたりもしない。 病気になって乳がん関連だと、あと家族を亡くされた方なんかをみると励ましてあげたくて仕方がないんです。もう励ましたい気持ちがいっぱい。気持ちがわかるからだと思うんです。

もともと人にお願いしたくない、頼りたくない、っていうのがあって。でも乳がんになって自分にも弱いところがあるんだっていうのを認められるようになりました。患者会ではやさしいですね、ってよく言われるんですけど、全然やさしい人じゃなかった。新しいキャラです。今でも会社ではキツイままだし（笑）

ーーどっちが本当のcocoさんなんでしょう？

どっちかわかんなくなりましたね。　病気になってから人とのつながりが好きになりました。

女同士の付き合いって難しいと思っていたけど、患者会とかに参加するととてもまとまりがあって。そんなことないんだな、って思いました。

わたし、全然深く悩んでないし、のんきなんです。患者会って自分の気持ちを言葉にしたい人が集まるじゃないですか？だから私、場違いかな？と最近思うこともあるんですけど、今診断されたばかりの人は１年、２年、５年先の先輩の姿が見たいんだろうな、って思うので、私ののんきな姿も役に立つんじゃないかと思っています。

乳がんと診断されたときに、その病院に乳がん認定看護士がいて、先生から女性だし看護士に相談してみれば、って言われたんですけど、確かに女性ですけど、体験者じゃないからピンとこなかった。一番落ち着くのは体験者の人と話すことだと思いますよ。

ーーマスメディアが発信する情報には偏りがあって、それによってがんのイメージが作られてしまう感じはありますよね。

がんで亡くなられる芸能人のニュースがありますよね。あれはあれで事実だけど、がんと診断されたばかりの人は不安になっちゃいますよね。

特に乳がんの場合は、元気な人のほうが圧倒的に多い。 なのに多くの人がいまだに「乳がん＝死」というイメージを持っていると思います。マスコミだから仕方ないんだけど、悲観的な面ばかり取り上げますよね。

ーーでも当事者である患者は元気な方の情報のほうを求めていますよね　

そうだと思います。再発した人のブログを読んで心配になる人が多いけれど、再発してない人はブログを書かないんですよ、元気になって書くことが無いから（笑）

確かに、再発・転移される方もいらっしゃって、辛い治療をする人も実際にいらっしゃるから、乳がんになっても元気でいるという情報を出しづらい、っていうのもあるんですけど、治療が順調な人の発信って少ないから、私はそっちを見せていきたいと思っています。「病気＝辛い」ってだけじゃないことを。

ーーこれからやってみたいことはありますか？

社会貢献活動をしたいです。前は仕事も忙しいし、そんなこと考えたことも無かったんですけど、今は同じ病気で悩んでいる人を励ましたいって気持ちが強いです。私が乳がんサバイバーの方に相談して「悩むこと無いじゃん」って言われて気づかされたことが大きかったから、いま悩んでいる人に同じようなことをしてあげたいって思っています。

ーー最後に乳がんと診断されたばかりの方へのメッセージをお願いします。

いまは不安でも絶対浮上するときがあります。底はあるから。底辺まできたら、そこからは上がるだけ。だから焦らないで、落ち込んだときは落ち込んで。そこから先は明るいほうを向いて欲しいです。（了）