乳がん情報サイトBC&Meでは、乳がんと診断されてから、治療、そしてその後の日常生活までをサポートする情報を発信しています。
乳がんと診断されてすぐは、不安な気持ちでいっぱいだと思います。
これからどんな治療が待っているのかしら?治療はどれくらい続くのかしら?
まずは乳がんの治療の流れを理解することで不安な気持ちを落ち着かせましょう。多くの方が乳がん治療を終え、日常生活に戻っています。
このページでは、乳がんと診断されてから手術、各治療までのステップを解説します。治療の流れを大まかにつかんで、乳がん治療に不安なく臨みましょう。
乳がんの標準治療とは
乳がんと診断されて、よく耳にするようになるのが、「標準治療」という言葉です。現時点での最新の研究に基づき、もっとも高い効果と安全性が期待できる治療を標準治療と呼び、日本乳癌学会がガイドラインを作成しています。
日本ではこのガイドラインに基づき、乳がんの専門医のいる医療機関なら保険医療の範囲内で乳がん治療を受けることができます。
また、たとえリスクが高い病理タイプとなっても、そのリスクの程度に合わせて最適な組み合わせの治療法が選択されます。
「標準」という名前から、もっと優れた医療が存在するのではないか、と思われがちなのですが、標準治療とは数多くの症例に基づいて導き出されたエビデンスのしっかりとした信頼のおける治療法です。
あたかも「がんが治る」かのようなような表現をする代替医療や健康食品が世の中にはたくさんありますが、これらはエビデンスに乏しいのが実情です。まずは医師としっかり相談の上、標準治療を選択しましょう。
乳がんの診断
健診で要再検査となっても、自覚症状がある場合でも、乳がんと確定するまでには数回の検査が行われるケースがほとんどです。乳がんと確定診断された後も、組織をとったり画像診断で遠隔転移を調べたりと検査が続きます。
乳がんと一口にいっても病理タイプによって治療法も予後もさまざまです。詳細な検査結果がでるまで、焦らずに落ち着いて待ちましょう。
乳がんと告知され、多くの方がパニックになりネット上に情報を求めます。しかし、ネット上の情報は古かったり間違っているものも多いので、日本乳癌学会から出されている患者向けの診療ガイドラインを参考にするのをお勧めします。お医者さんときちんと話せるように専門用語や基礎知識を身につけておきましょう。書籍のほか、ネット上でも公開されています。
現在、2019年度版が最新です。書籍でも購入できます。
乳がんの手術
乳房切除手術には大きく分けて温存と全摘の2種類があります。どちらを選ぶかは腫瘍の場所や病理タイプ、患者本人の意向などから総合的に決められます。
温存とは、乳房の一部を切除することで、腫瘍の位置により切除する場所が異なります。乳首や乳輪部分も切除することで見た目が大きく変わる場合や、切除部分が小さくほとんどわからない場合もあります。
全摘とはその名のとおり、乳房を全部切除します。ふくらみが無くなった状態になります。
以前はなるべく乳房を残すために温存手術を選択する方が多かったのですが、乳房再建手術が保険適用になったこともあり、全摘+乳房再建手術を選ぶ方も増えてきました。
浸潤と非浸潤
乳がんは浸潤がんと非浸潤がんの二つに大別されます。
浸潤とは、がん細胞が周囲の組織を壊しながら入り込み、広がっていくこと。乳がんの場合は、がん細胞が乳管・小葉の中に収まっている場合、非浸潤となり、適切な治療を行えば、転移・再発のリスクはほとんどありません。
一方、がん細胞が乳管・小葉の周囲に広がっている浸潤がんの場合、転移・再発のリスクがあるため、リスクを抑えるための治療が行われます。
浸潤 | がん細胞が周囲の組織を壊しながら入り込み、広がっていくこと。転移・再発のリスクあり。 |
非浸潤 | がん細胞が乳管・小葉の中に収まっている状態。転移・再発のリスクはほとんどない。 |
手術後に最終的な病理結果がでます
手術時に切り取った腫瘍部を検査し、ここで最終的な病理結果がでて治療方針が決定されます。術前と検査結果が異なる場合もあります。ステージが低く、非浸潤の場合は切除手術だけで治療が終了する場合もあります。検査結果は病院によって異なりますが、1~3週間ほどかかります。
検査の結果が出るまで不安かと思いますが、現在、乳がんの5年生存率は90%を超え、多くの方が治療後に日常生活に戻っています。過度に心配する必要は全くありません。この時期は、これから始まる治療のために心と体を整えておきましょう。
乳がんの4大治療
乳がんの主な治療法は放射線治療、抗がん剤(化学)療法、ホルモン療法、分子標的薬の4つです。病理タイプごとにこれらを組み合わせて治療方針が決定されます。
放射線治療
放射線を患部に局所的に照射し、がん細胞にダメージを与えます。主に乳房温存手術を選択された方に予防的に行われていたり、全摘手術でもリンパ節への転移が見られる場合に行われたりしています。放射線の照射は1~2分、放射量によって16~30回、平日毎日通院します。
抗がん剤治療
浸潤がんの場合、発見された時点で血液やリンパの流れにそって他の臓器に転移している可能性があり、この画像にも映らないような小さな転移(微小転移)を根絶させるのが抗がん剤の目的です。再発・転移治療以外に使用する場合は予防的に使われるため、抗がん剤を使用するかどうかを患者の判断に委ねられる場合もあります。
がん細胞の性質、働きかけるポイントごとに数種類の抗がん剤薬があり、病理タイプや体調に合わせて投与されます。複数の抗がん剤を組み合わせて使われ、3週間おき4クール(約3ヶ月間)が標準的です。
腫瘍が大きい場合は、術前に抗がん剤治療を行い、腫瘍を小さくしてから手術を行うこともあります。他の臓器に転移している場合や、再発した場合には、がん細胞を完全に根絶させることは困難ですので、進行を抑えることで延命効果を得たり、症状を和らげる目的で抗がん剤を用います。
抗がん剤治療では脱毛、吐き気、倦怠感、しびれなど様々な副作用が発現します。ただし、今は副作用を抑えるよい薬や予防・対応策もあります。詳しくはこちらのページでご紹介しています。
ホルモン治療
ホルモン受容体とは、エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PR)のことで、乳がんにこのどちらかがあれば、ホルモン受容体陽性がんとなります。女性ホルモンの一種であるエストロゲンがこれらのホルモン受容体にくっつき、がん細胞が増力するように刺激します。
ホルモン受容体が陽性と診断された患者にエストロゲンをブロックするホルモン治療が行われます。エストロゲンの働きを抑制するため、更年期障害に似た副作用がでるとされます。5年から10年の長期間、経口薬や注射による治療が続きます。
分子標的薬
がん細胞を分子レベルで攻撃する薬です。たとえば「HER2タンパク」の働きをブロックし、がん細胞の増殖を抑える薬にトラスツズマブやペルツズマブなどがありますが、これは病理タイプが乳がん患者の15~20%とされているHER2陽性の方にのみ使われます。
トラスツズマブの場合、抗がん剤のように脱毛や吐き気などの副作用は起こりませんが、心機能の低下(100人に2~4人くらい)や呼吸器障害があるため、治療前と治療中は定期的な心機能検査が勧められています。
乳がんの治療が一段落すると
標準治療が終了すると、その後は経過観察となり、年に数回の検査のみとなります。
残念ながら再発・転移した場合は、また新たに治療が始まります。
治療が一段落すれば、日常の生活に戻られている方がたくさんいらっしゃいます。再発・転移しても、薬でコントロールし、日常生活を過ごされている方もたくさんいらっしゃいます。
乳がん治療の流れについて解説してきました。乳がん治療は個々人の状況に合わせて、複数の治療を組み合わせて行われますが、時にはどの治療を選ぶかの選択を患者側に委ねられるときもあります。
納得のいく決断ができるよう、乳がんに対する基本的な知識を学ぶことはもちろん、わからないことがあったら医師になんでも質問してみるなど、コミュニケーションをうまく取ることも大切です。
そんなときに使える便利なアイテムが乳がん治療を記録できるBC Noteです。BC Noteには検査結果を記入するページや抗がん剤治療の体調を書き込むことができるページなど、乳がん治療を記録するためのコンテンツが満載です。
ノートに記載することによって、自分が何を不安に思っているのか、どこがわからないのか、といった点が明確になるので、医師とのコミュニケーションにも役立ちます。
BC Noteは、乳がんサバイバーの「こんなのがあったら!」という声から生まれました。乳がん治療の体調やスケジュールの管理に役立つ機能が満載です。治療中の不安な気持ちを整えるのにも役立ちます。バックにも入れやすいA5サイズ、全60ページです。